金剛蔵王大権現像

  • 鎌倉時代 13世紀
  • 木造
  • 彩色
  • 寄木造り

こちらの蔵王権現像は頭部のみが伝わっています。

明治時代に入り、神仏分離・廃仏毀釈(はいぶつきしゃく・寺院、仏像、経巻などを破壊し、神仏習合を廃して神仏分離を押し進めた明治政府の一連の不条理な弾圧)の嵐が吹き荒れ、修験道は壊滅へと追いやられました。
お寺は潰され、ご仏像も破壊、古文書類も焼却、徹底的な弾圧を受けたのです。江戸時代末まで吉野山にも百を超える寺院が甍を並べておりましたが、ことごとく破壊されました。
しかし真理は失われることはありませんでした。心ある人々が「法灯」と「こころ」を護って下さったのです。

こちらの権現像も、ひそかに土の中に埋められ、破壊焼却からまもられました。そして十数年の後、廃仏毀釈が解かれたのですが、その年月は永すぎました。土中から戻られたお姿は、残念ながら朽ち果て、残ったのは一部のみでした。
しかしその眼光は今もなお鋭く輝き続け、拝むものを暖かく導いて下さいます。
当山にはこちらの他にも、ご仏像の胴体、火焔、手足や蓮台などの残欠等、廃仏毀釈の傷跡が多数伝わっております。

金剛蔵王大権現とは、神変大菩薩がご感得(祈り出)された修験道のご本尊です。
役行者さまが大峰山をご開山のとき山上ヶ岳山頂に於いて、社会と衆生を守護済度くださるご本尊を祈請されたところ、先ず釈迦如来が、次いで千手観音・弥勒菩薩が現れたといいます。
しかし末世剛悪・混迷しきった世間や人心を救うにはあまりにも優しすぎるとして、さらに祈りを重ね一千日のご修行の末、最後に忿怒身をもった金剛蔵王大権現(こんごうざおうだいごんげん)がご出現下さった、と伝わります。(『金峯山秘密伝』)

青黒色の肌をもち、火炎を背負い、怒ったようなご表情で右手には三鈷杵(さんこしょ)を持し、左手は剣の印を結び、右足を虚空高く蹴り上げ、左足は大盤石を踏みしめておられます。そしてその三つの眼ですべてを見透し、私たちを救済くださるのです。

権現とは仏や菩薩が衆生を救済するために、権(かり)の姿をとって現れること、あるいは現れたお姿、という意味です。
蔵王権現さまは、釈迦如来・千手観世音菩薩・弥勒菩薩の変化されたお姿(権現)で、輪廻転生を繰り返す私たちの過去・現在・未来の魂を守護しお救い下さるご本尊です。

蔵王権現と共に十五童子もご出現、そのうち八大童子が大峯々中を、七大童子が葛城峯中を今日もなお守護くださっております。

そして役行者尊は、ご感得されたご本尊蔵王大権現さまと共に吉野山へ下り、桜の木でそのお姿を自ら彫り祀られたのです。
その時、修験の道が開かれたといえましょう。

合掌

ご宝号
南無金剛蔵王大権現(金剛蔵王大権現にすべておまかせし帰依いたします)
ご真言
オンバサラクシャアランジャウンソワカ