櫻本坊縁起
万葉の時代 天智10年 … 天智天皇の弟、大海人皇子は吉野離宮日雄殿にてご修行されておりました。
激動の時代の中で、「野に放たれた虎」とも称された日々のこと。
ある冬の夜、吉野の山の中に満開の桜がみごとに咲き誇る夢をごらんになりました。
翌朝めざめられ、前方の山を見上げると、冬だというのに夢そのままに一本の桜が美しく堂々と咲いていたのです。
大海人皇子は不思議に思われ、すぐに役行者の高弟 角乗に夢判断を命じました。
角乗とは「宇宙の皇子」と称された役行者を師とし、大峰山で行を積む高徳の僧です。角乗は謹んで答えました。
「桜の花は日本の花の王です。この夢は殿下が天皇の位につかれるよい知らせでしょう」と。
翌年、壬申の乱に勝利し、大海人皇子は帝位につかれ、天武天皇として即位されました。
天皇は大変およろこびになり、夢に現れた桜をもとめ吉野の山に登られました。そして、夢に見た櫻 ( 天武天皇 「夢見の桜」 ) と出会い、そのもとに道場を建立、 「櫻本坊(さくらもとぼう)」と名づけ、角乗を住職に迎えたのです。
爾来、天武・持統天皇の勅願所となり、1300年 神仏と共に大いなるいのちのなかで 天下の泰平(世界平和)・万民の安楽(すべての魂の安らぎ)を祈りもとめる修験道の根本道場として今日に至ります。
… 夏の大峰奥駈修行をはじめ止観や沐浴行・写経写仏などの浄行、聖天さま、お釈迦さま・お地蔵さまなどの法要を通し、人格と自己を実現する「場」、それが櫻本坊 道場です。
「懺悔懺悔六根清浄」(さんげさんげろっこんしょうじょう)、お互いを通して磨き高めあいましょう。
合掌